厚生労働省発表の「令和2年度雇用均等基本調査」結果によると,令和2(2020)年度の男性育児休業取得者の割合は12.65%となり,前年度の7.48%から大幅な上昇がみられたとされています。
このように男性の家事育児への参加が注目されてきている昨今,育児休業について,自分も取得してみたいと考えている男性は少なくないと思います。
とは言っても,
そもそも男性も育休って取得できるものだったの?
といった疑問や,
ダメダメ,そもそもウチの会社はOKしてくれるわけないよ!
と,半ば諦めにも似た心境になってしまっている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで今回は,育休をめぐる法制度がどのようになっているのかについて,ご紹介をしたいと思います。
※2022年4月からの改正内容は今回は含んでいません。
1.結論を先に・・・
結論から述べてしまえば,男性も育児休業は取得できるようになっています!
これはいわゆる「育児・介護休業法」という法律で育児休業制度が規定されていることによります。
では,どういった目的でこの法律が制定されているのでしょうか? 男性が取得できるという法的根拠とともに,育休に関する部分を中心に法律の内容を見てみようと思います。
2.育児・介護休業法の目的
同法第1条では,その目的を次のように規定しています。
この法律は、育児休業及び介護休業に関する制度を設けるとともに、子の養育及び家族の介護を容易にするため勤務時間等に関し事業主が講ずべき措置を定めるほか、子の養育又は家族の介護を行う労働者等に対する支援措置を講ずること等により、子の養育又は家族の介護を 行う労働者等の雇用の継続及び再就職の促進を図り、もってこれらの者の職業生活と家庭生活との両立に寄与することを通じて、これらの者の福祉の増進を図り、あわせて経済及び社会の発展に資することを目的とする。
育児介護休業法 第1条
・・・いつも思うんですけど,法律の文章ってちょっと固いですよね(;^_^A
まあ,「あはは~(^O^)」みたいにかる~い感じで書かれていたらそれはそれで「大丈夫かこれ?」ってなりそうですが(笑)
さて,これを育児休業に関連する部分についてとっつきやすい言葉に置き換えながら簡単にまとめると,およそ次のようになるのではないでしょうか。
(法律が専門ではない執筆者独自の解釈なので,その点はご了承ください。)
- 育児休業に関する制度を設けるよ。
- 子どもの養育をしやすくするために,勤務時間などに関して事業主が講じるべき措置を定めるよ。
- 子どもの養育を行う労働者等に対する支援措置を講じるよ。
- 上記のようなことによって,子どもの養育を行う労働者等の雇用継続や再就職促進を図るよ。
- そうすることで労働者等の仕事と家庭生活との両立に寄与するよ。
- これを通じて,労働者等の福祉の増進や経済・社会の発展に役立つようにすることがこの法律の目的だよ。
ざっくりまとめるとこんな感じでしょうか。こうやってみると,育児をする労働者に対する配慮がかなり色濃く出ていることがわかるのではないでしょうか。
3.男性が育児休業を取得できるという法的根拠は?
そもそも,この法律のどこを見ても「男性は育休を取れません」とか「女性だけが取得できます」とは書いていません。
また同法第2条には用語の定義がしてあり,その中で「対象家族」について次のように規定しています。
四 対象家族 配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下この号及び第61条第3項 (同条第6項において準用する場合を含む。)において同じ。)、父母及び子(これらの者に準ずる者として厚生労働省令で定めるものを含む。)並びに配偶者の父母をいう。
育児介護休業法 第2条
これによると,「対象家族」とは「配偶者」,「父母」,「子」,「配偶者の父母」となっています。
これだけ読むと
「何??どういうこと???」
となりそうですが,この法律が育児に加えて介護についても規定したものだということを念頭に置くとその意味が理解できるかと思います。
いずれにせよ,「対象家族」の定義を見る限り男性が取得できないとはなっていません。むしろ「父母」という表現で「父」が含まれているわけですから,当然男性も育休取得できるわけです!
もしかすると「男性は育休を取得できない」と思っていた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
これは「男性は仕事,女性は家事育児」というジェンダーバイアスに起因するのではないかなと思います。
4.勤務先に拒否されたらどうしよう・・・?
法律で男性も育休を取得することが可能なのは分かったとして,実際に職場の上司に育休を申請したところ,
「はっ!?ウチの会社は男の育休なんて認めていないから」
などと言われてしまったなんていう経験がある方もいらっしゃるかもしれません。
しかし,育児・介護休業法の第6条には次のようにあります。
事業主は、労働者からの育児休業申出があったときは、当該育児休業申出を拒むことができない。
育児介護休業法 第6条
一定の条件はあるものの,労働者の育休申請を拒む権利は会社側にはありません。
つまり育休取得希望者に対して「うちの会社は育休認めてないよ」として育休取得を拒否することは明らかな法律違反となります。
いわゆるパタハラ(マタハラ)を含め,育児介護休業法に違反した場合,その企業名の公表や,最大20万円の過料などの罰則も規定されています。
5.まとめとして
いかがでしょうか。ここまで見てきたように男性の育休取得に対する法的なハードルはそこまで高いものではありません。むしろ高いのは男性育休を良しとしない,その企業(もっと言えば日本社会かもしれません)の風土なのかもしれません。
僕はそう言った「いつの時代だよ!」とツッコミたくなるような文化に風穴を開け,男性育休取得希望者が取得しやすい環境整備のきっかけづくりにもなればという思いもあり,思い切ってほぼ1年の育休を取得した次第です。
正直にいうとここに至るまでにはハラスメント的な行為を受けたこともあるのですが,その辺りはまた別の機会に…
この記事をきっかけに,育休取得したい方々が法的知識を得て会社に対して毅然とした態度で当然の権利として育休取得を申請できるようになればなと思っています。
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